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人は原子、世界は物理法則で動く―社会物理学で読み解く人間行動 [自然科学]

社会科学は物理学のように明快な理論は成立しないと思われてきた。
その理由は人間が複雑だから。

経済学は複雑な人間を、合理性という理論で動くと仮定することで多くの数式をたててきたが、そのほとんどが現実世界と合致していないことがわかっている。つまり使えない。
社会現象は正規分布になることは少なく、ほとんどの社会現象はべき乗の分布になりすそ野の広いカーブが出現する。
これからわかったことは、われわれ人間は常に合理的に判断して動く生物ではないということだ。

合理性というは、かなり後で人間が獲得した能力で、我々の能力のほとんどは洞穴で野生動物や飢えにおびえながら生きてきた間に獲得されたものなのだ。
近年の行動経済学があきらかにしてきたところによれば、われわれは、合理的な計算機械ではなく、狡猾なギャンブラーであり、適応性のあるご都合主義者である。

心理学の研究が我々人間の特質を明らかにしてきた。
・パターンを認識し、変化する世界に適応するのが巧みである。
・他の人を模倣する。
・集団の中では個人の利益より集団の利益を優先する。そういう集団が生き残ってきた。しかし属している集団への強いつながりゆえに、他の集団に属する人間には強い恐れと軽蔑を抱く。

確かに人間は複雑だ。しかしそのなかでも特に注目すべき特質だけを抜き出して、注目することで、社会に現れるパターンを説明することができる。

これは物理学が個々の原子の振る舞いを予測できないのに、全体としてみると合理的な説明ができるのと似ている。
人間も自然の一部なのだから、人間を原子のようにとらえ、社会をその全体ととらえるなら、物理学のように説明できるというのは、ある意味あたりまえなのかもしれない。

幸いなことに現代の社会学者には心理学の研究成果と高性能なコンピュータがある。
コンピューター上の仮想社会に人間を配置し、注目すべき特質をあたえてシュミレーションを繰り返すことで、社会で実際におきている現象と同じ状態をつくることができる。

こうした研究からわかってきたことは、流行や虐殺、人種間で住む場所がわかれる、マンハッタンが再生するなどの社会現象は、人間相互のフィードバックによる自己組織化が大きいということだ。

これまでの社会学では、個々の事実を調べ、キーとなった出来事や人物を調べることで説明しようとしてきたが、それでは完全に説明できないことが多かった。

しかしシュミレーションで自己組織化の仕組みがわかれば対処方法や利用方法もさぐることができる。

シュミレーションするときは、人間を表すモデルをコンピュータ上に用意し、それぞれが採用しているパターンを配置。何回うまくいかなかったら別のパターンにするかを現実社会を参考にして設定。シュミレーション結果が現実の社会現象とあっているかみる。場合によっては設定値を変える。
みたいな感じでやるようだ。

暴動の場合は、周りの何人が暴れていたら自分も暴れるかの閾値を適切に設定すると、現実世界でおこったこととシュミレーション結果が一致する。

民族の憎しみあいは集団内の徹底的互恵主義と表裏一体だ。
コンピュータシュミレーションでは、生まれたときにランダムに色をつけて、色の数を同じにして、近い人とのかかわりが高いという条件をつけた。戦略は4つ。
1誰とでも協調
2だれとも協調しない
3同じ色の人とだけ協調
4違う色の人とだけ協調
さいしょはこの戦略をランダムにわりふって、同じ数にしておく。
そして、他の人の戦略がうまくいっているようだったら模倣する可能性をつけておく。
これで人々が1000回のかかわりをもつまでランさせる。寿命もあるので生まれたり死んだりする。いろいろ条件をかえても結果はいつも3の戦略がひろがっていた。
偶然同じ偏見をもつ抱く人の小集団があらわれ内部ではうまくいくが、偏見のない人はこの人たちから利益がえられないので、偏見のある人の方がうまくやっていると判断して戦略をかえていく。結果として偏見が有効に働く社会ができる。
意味のないレッテルが組織化されることのない社会の実態にある種の構造をあたえ、そのおかげで人々は同属集団の一員となって以前より適切な判断が下せるようになる。
われわれの先祖は偏見をだくことで適応し、進化したのではないか。正しいふるまいとはどういうものかについて同じ考えをもっていると積極的にかかわるのが比較的容易なのである。

民族間の憎しみと不信が暴力につながるときには、目的達成に利用する政治的指導ないし党派の決定的行動がある。
ある種の人々が歴史に強烈な影響を行使するのは社会のパターンをうまく操っているからである。
個人が手にしている権力はその人間に由来するよりも集団組織に由来している。階層性組織が集団のちからの増大を実現するから、人間はそういうふうに組織化してきたのだ。
社会物理的にいえば、異民族間の憎悪は人間の集団がとる基本的な行動様式のひとつである。指導者はそれを利用しているのである。

金持ちがますます金持ちになる理由。
これまえは個人の才能とか相続財産、縁故などで説明されてきたが、世界的にみてどの地域でも富の分布が偏ることの説明にならない。
富をあたかも物理的物質の一種であるかのように大ざっぱにかんがえるとうまくいく。
資産の変化は二つの形がある。
1移転、労働賃金や物の売買のように富の総額はかわらず、個人の間を富が行き来している
2投資、住宅価格や株のように増えたり消えたりする。
この特性に注目したコンピュータシュミレーションでは売買は富の格差をなくす役目をするが、それよりずっと強く投資による富の偏りがおこることがわかっている。われわれは複利の力を低く見積もりすぎなのである。シュミレーションでは一部の人に富が集中し、それは現実世界と似た状態になった。
人間の才能よりも、必然的ななりゆき(投資したものがうまくいった)の要素の方が大きい。

火星の川でも地球の川でも液体が流れたあとにできる後には同じ特徴がある。人間社会も自然社会も同じ数学的法則で動いているのではないか。

総売り上げと企業の数にもべき乗測がはたらく。まるでソビエトの計画経済のように。成長速度もそうなるそうだ。
コンピュータシュミレーションでは
1自分で仕事をするか企業で他の人と仕事をするか選べる
2強調して仕事をおこなうと、生産高は10倍をこえて従業員は個人で働くより多くの恩恵をうける
32のなかに「ただのり」する人があらわれて集団の利益をそこなっていき、働いている人たちが損だと判断するようになる。(他の人の分も働くことになるので)
さらに、野心的で懸命に働く人、収入より時間を重視する人などのモデルとつけくえわえた。
最初は野心的な人たちが企業を形成し、成長し生産性があがるが、時間の経過とともに多くの従業員がふえて、意欲のない人たちがただのりをはじめ、それをみた他の人たちが模倣して、生産性が下がり、勤勉な労働者は別の企業にうつるか起業するため大企業は損害をうけてしまう。
中小企業では個人のがんばりが全体に及ぼす影響が大きいのでこういうことはおきにくい。
このモデルは驚くほど現実社会をうつしだしている。
企業にとって協調性が生み出す社会的まとまりが繁栄の原動力なのである。これはわれわれの祖先のちからになった能力だ。

平衡状態にならず、常に変化する社会をこうして理解できるのは、原子の注目すべき特質を理解して、そこに注目して理論をたて、それをコンピュータ上でシュミレーションできるからである。

意図していなかった変化がおきることがある例。
アメリカの航空輸送業の規制を緩和したら航空会社間の競争がおこり、運賃の値下げとサービスの向上になるとおもったのに、実際は直行便の数は減り、航空会社の数も減り、料金は予測しにくく制約をうけるようになり、航空会社の財務状態は破たん状態にあり、一部路線は格安でも他の料金はあがるという事態になった。さらに航空機がうれなくなって新型機の開発ができなくなった。

今のわれわれは得られた社会物理学で予測をすることができる。
イリノイ州の電力市場の規制緩和のときの調査と欠陥をおぎなうための手立てに利用した。

社会の原子である人間とその相互作用の大まかな描画を手にして、数学でもコンピュータでも利用すれば、現れてきそうなさまざまなパターンとその帰結をしることができる。

個々の人間よりもパターンが重要なのだ。そしてパターンは物理学で得られているのと同様の数学的法則が使える。

個々の合理的人間の判断による行動をもにした経済学があらわれるまえは、こうした経済学があったとしてスミスとヒュームがあげられていた。
人間を完璧に合理的な生き物とみなして人間以外の自然の上におく考えが賛美されてきた背景には宗教思想が宗教の範囲をこえて外部に及ぼした哲学的影響がある。
しかし人間も自然の一部であるとうけいれることで、われわれは自分のたちのことをもっとよく理解できる。


人は原子、世界は物理法則で動く―社会物理学で読み解く人間行動

人は原子、世界は物理法則で動く―社会物理学で読み解く人間行動

  • 作者: マーク ブキャナン
  • 出版社/メーカー: 白揚社
  • 発売日: 2009/06
  • メディア: 単行本



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