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本のベストセラー

進化しすぎた脳 [自然科学]

著者は東京大学大学院の薬学科で脳科学を研究する研究者。
NY留学中に高校生(日本人)を相手に脳科学の講義をしたときの様子をまとめたもの。
同様の企画に「単純な脳、複雑な私」という著書があるが、それよりも以前の講義。

第1章
人間は脳の力を使いこなせていない

脳には役割分担があって、見るという行為でも、像を移した後、それがなにか判断する回路と、何をしているか判断する回路があったりする。こういうことは、脳を損傷した人間の記録や、動物実験でわかってきている。
そして、人間同士なら大雑把な機能の場所は同じ。
動物実験では聴覚と視覚のつなぎ替えをしたものもあるのだが、本来の機能は発揮できなかった。
脳の機能は、ある程度は他の場所でも代替えできるが、本来の場所ほどのポテンシャルは発揮できないらしい。

脳の使い方というか役割・機能をきめているのは、私たちの体。イルカの脳は潜在的には人間より優れているが、体が違っている(特に声帯があって言葉を操る)ために、抽象的な思考ができない。

人間でも脳がすごく小さい病気の人がいるのだが、全然知能にも運動にも支障がなく、わからないケースがほとんど。つまり脳にはすごく余裕があって、もっと小さいサイズでも今やっていることくらいはこなせる。
進化には理由なんかないが、脳は進化しすぎているといえる。

脳科学の動物実験では、動物が何かしようとしている脳の動きを解析して、それを再現できる。
つまり動物が水がのみたいからボタンを押そうと思っただけで、水をだしてやるなどということが可能。


第2章
人間は脳の解釈から逃れられない

人間の行動はどこまでが意識で、どこまでが無意識なのか。
見るという行為を観察すると、脳はたったの100万画素で世界を映しとっているとわかる。
それなのに、デジカメの100万画素よりずっとなめらかな世界を見ていると感じることができる。
どうやら、補ったり、補正したりして、今見える(と思える)世界を脳内につくっているらしい。
そういう意味では目があるから世界が見えるといえる。
われわれは無意識に脳が処理した知覚から逃れられない。
「クオリア(感覚覚醒)」は表現を選択できない、そう感じて脳が告げることは変えられない。

著者の意識の3条件は
1表現を選択できること
2短期記憶ができること(選択するには、前にあったことを覚えていないとできない)
3そして経験や状況で選択を変えられる「可塑性」があること

ただし我々の思考は言語に依存している。
言葉を失った人は抽象思考ができない。「何がのみたいですか?」には答えられない。
「ジュースが飲みたいですか?」には答えられる。
動物でも抽象的な概念はもてるが、それはどうやら脳の特定の位置に回路をつくるらしい。
抽象概念ごとに回路をもつと大変なことになるので、人間は言葉をあやつることで抽象概念を扱うらしい。

ミラーニューロンも抽象思考。
「こわい」「悲しい」などの「クオリア」も抽象的なもの、言葉が生み出した亡霊。

言葉は確かに意識だが、普段しゃべっているときは意識は使っていない。
究極では「ボタンを押すだけ」の実験でも、まず無意識のところがボタンを押す準備をしてから「ボタンを押そう」という意思が発生するのが観察された。
我々は脳の無意識が生み出すものに多くの場合影響されている。


第3章
人間はあいまいな記憶しかもてない

完璧な記憶はむしろ可塑性を阻害する。
だから脳は、あいまいに記憶し、ゆっくり学習(汎化)する。それが脳の適応力。

神経細胞の中を情報が伝わっていく仕組み解説。
細胞内はイオンによる電気。細胞と細胞の間、神経細胞から伸びたシナプスとシナプスの間は化学反応(神経伝達物質の放出)で伝わる。細胞内を電気が流れるのをスパイク、しかしシナプスはスパイクが来ても必ず神経伝達物質を放出するわけではない。これがあいまいさを生んでいる。

電気が流れるのはナトリウムイオン、塩素イオンはブレーキの役目をする。塩素イオンは数はすくないが協力にはたらく、このブレーキが壊れているのが「てんかん」の患者。

シナプスの間を伝わるかの確率はあるものの、基本的には神経細胞に電気が流れるか流れないかなので、単純なモデルで表せる。しかし、このモデルが複数であると3体問題をおこして解けなくなる。しかし複雑系の理論を適用することで、単純な動作をするものがたくさん集まったときの全体の動きを説明できるようになった。神経細胞の働きも複雑系。

同時(20ミリ秒以内)に電気が流れた神経細胞同士のネットワークは強化される(ヘブの法則)
強化される細胞は近くにあるとは限らないのも面白いところ。
また、活動の順番が記憶と関係していることを、著者が論文で発表したといっていた。

脳の神経細胞はほんの一部を除いては入れ替わらない。ただしシナプスの結合は増える。


第4章
人間は進化のプロセスを進化させる

脳にとって重要なのは神経細胞ここではなく、そのネットワークとその強さ(使われる回数)。
脳には発達の段階で、どこの神経細胞と結びつくべきかとう誘導分子がいる。

脳は情報処理をするためにフィードバックする。しかし、大脳皮質の細胞は140億。
だから3回もフィードバックすると自分に返ってくる。=反回性
この「反回性」に使われている神経は人間では脳の神経全体の99.99%のこりが、外からの神経とつながっている。
人間の理解速度と、シナプスの伝達速度から、脳は100ステップ程度で情報を処理しているらしい。

薬が人間に及ぼす作用を研究することで、神経に作用する物質がわかってきた。
本ではアルツハイマー病をとりあげて、神経伝達物質を阻害するβアミロイドが原因であることを解説。
具体的には神経伝達物質の回収役グリア細胞(脳の細胞の90%をしめるといわれている)の回収機能を高めるために情報が伝わらなくなる。そのため、思い出せないなどの症状がおきる。
この治療のため、βアミロイドをつくらなくする方法など考えたが、副作用(正常な機能もそこなわれる)ため、βアミロイドを先に投与して抗体をつくる方法がためされている。また、神経が壊される段階ではアセチルコリンの細胞が真っ先に死ぬことから、アセチルコリンを殺す物質を減らす薬なども開発されている。

このうような病気がおこるようになったのは、人間が長生きするようになったからともいえる。
今までも、年をとるとβアミロイドが蓄積されるという作用はずっとあったが、アルツハイマーになる前に死んでいたので発症する人は少なかったのだろう。本来の進化は自然淘汰だが、人間の起こしている進化は「環境改造」である。着床前診断もその一つ。

著者の印象としては、脳は体に依存するので、もしAIが心をもっても人間には理解できないのではないか。
脳はほとんどが無意識。だから脳を使って脳を考えている我々にも盲点があるはず。


第5章
僕たちはなぜ脳科学を研究するか

日本に帰って、研究室の大学院生と、脳科学を志したきっかけを話したもの。
塾講師をしていて、覚えのいいやつと悪いやつがいるのはなぜかとおもったなど、いろんなきっかけが語られている。
著者自身は、大学で面白かった先生の講座にはいったのだそうだ。やってみたら面白かったといっていた。
脳科学者は普段とても地味な実験ばかりしている。だからこそ、発見にあったときは素晴らしく感動する。
人類でそれにであったのは、自分がはじめてだ、みたいな。

脳は自発的にエネルギーをだしてゆらいでいる。だから同じインプットをしても脳は同じ結果をださない。
ゆらぎを観察することで、質問をする2秒前に正解かどうかわかる。
揺らぎ(脳派)は観察することで、ある程度自分でコントロールできる。
意識とはなにか、植物状態の人間に「テニスをしてください」と話すと、対応する脳の部位が活動する。これは意識か?
科学で証明できるのは相関関係だけで、因果関係ではない。


付録
行列を使った記憶のシュミレーション。
ある結合がつかわれると+1、使われないとー1となるモデル。
3個のモデルを行列であらわし、何度かパターンAをいれる。その後そのパターンAを思い出す(×)と、行列からパターンを取り出せる(思い出せる)
次に別のパターンBをいれる。そこでAやBを取り出してみると、たくさんいれたほうがとりだせる。
さらにはもし、とりだせないときには0をいれてやることにすると、不完全な情報から完全な情報を取り出せる。
というモデルの解説。



進化しすぎた脳 (ブルーバックス)

進化しすぎた脳 (ブルーバックス)

  • 作者: 池谷 裕二
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2007/01/19
  • メディア: 新書



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